変圧器内部の焼損に注意!
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サーモビジョンにより変圧器内部の焼損を発見
昨年6月、あるお客さまに月次点検で訪問したときの出来事です。いつもの点検と同じようにサーモビジョンで動力用変圧器の表面温度測定をしていたところ、低圧側ブッシングの根元でサーモビジョンの画像に他の部分とは違う色があることが少し気になりました。ただ、お客さまの受電設備は2階の屋内倉庫にあり、室温も高く、稼働率の高い変圧器であり、周囲温度や使用状況の影響で高温になっている可能性もあるため、お客さまに現状を報告して、次回の点検まで経過観察することにしました。
その後、2カ月経過を観ていましたが、変圧器の本体温度が平均70℃であるのに対して、低圧側ブッシングだけが80℃前後と、やはり温度が高いことから、停電点検を計画して変圧器内部に異常がないか確認することにしました。
停電点検の当日、工場を全停電し、早速、過熱していた変圧器の精密点検を実施しました。変圧器内部点検口のナットを緩めて蓋を開けてみると、変圧器内部の絶縁油の焼けた臭いがしてきました。ハンドライトで内部を照らしてみると、電圧切替タップ盤の接続金具が溶けて、一部分かろうじて残っている状況でした(写真参照)。ちなみにこの電圧切替タップ盤は、高圧から低圧に電圧を変換する際の出力電圧を調整するための重要な部品です。
このまま変圧器を使用すると、異常電圧を発生し、使用している機器を損傷することが考えられることから、お客さまに状況説明をして電路から変圧器を切り離して復電しました。停電点検当日は日曜日で、お客さまの工場操業に影響はありませんが、週が明けると動力変圧器がないため工場の機械を稼働することができません。そこで急きょ、お客さま承諾のもと仮設発電機の手配と工事店に配線切換工事を依頼し、翌日月曜日の早朝より復旧工事を行い、午前中のうちに工場を稼働することができました。
今回は、サーモビジョンという新しい温度測定装置で些細な異常を発見することができ、工場操業中の事故に至ることがなかったことをお客さまから大変感謝されました。
今回の件では、最新技術を取り入れつつ、旧来からの経験に基づく確かな点検の姿をお客さまにお示しすることができたことが大変うれしかった事例です。これからも、電気設備の異常を早期に発見し、お客さまに安心して電気を使っていただけるように努めてまいります。