DX推進

DX推進計画の策定にあたって

 「DX推進計画」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

 当協会は、「ビジョン2030」(2021年度策定)においてITの更なる活用とDXの積極的推進を目標に掲げ、その計画的かつ効率的な実現のためにとりまとめた「IT化構想2030」に基づき、バラバラに開発されてきた各業務システム間のデータ連携や相互利用の課題を解消するよう、IT資産の整備を進めてきました。
 さらに、2024年7月には「DX推進本部」を発足させ、協会全体の調整・推進体制を強化しています。

 こうした取り組みにより、「IT化構想2030」は概ね計画どおりに進捗しており、その成果を踏まえ、今後は当協会が保有する数多くのIT資産を最大限に活用し、「データに基づく意思決定」、「業務プロセスの変革」および「新たな価値創造」を通じて、安全性とサービス品質をさらに高め、将来にわたり持続的に発展することを目指して、2025年10月に本計画を策定しました。

 近年、社会やお客さまのニーズはますます多様化・高度化しており、迅速で的確な対応が求められています。当協会が培ってきた技術と経験を礎に、クラウドやAI、IoTなどのデジタル技術を実装することで、保安業務をはじめとする主要業務の高度化・効率化を図ります。なかでも、異常の早期検知や予防保全を可能とするスマート保安システムの導入や、データを一元管理するデータ活用基盤の構築は、安全性向上と業務の生産性向上に直結する重要な施策として取り組んでまいります。

 しかし、新たな技術の導入だけでは十分な成果は得られません。本計画では、レガシーシステムの段階的な再構築、全社横断のデータガバナンスの整備、そして何よりも人材育成と組織文化の変革を重視しています。全従業員がデジタルリテラシーを高め、自ら課題を発見し改善に取り組む風土を醸成することは、真のDX実現に欠かせません。経営として、明確なビジョンと堅実なガバナンスのもと、現場の創意工夫を支援し、成功事例を協会全体で共有していきます。

 本計画は2025年度から2030年度までのDXの道筋を示すものであり、計画の推進にあたっては段階的で柔軟な実行を旨とし、進捗や課題を都度評価・改善していきます。DX推進は一過性のプロジェクトではなく、組織の成長を支える恒常的な取り組みであり、全従業員、外部パートナーと連携し、着実に変革を進めていく所存です。

 今後とも、皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2025年12月25日

一般財団法人中国電気保安協会
理事長 天野 浩一

DX推進計画

目的

 当協会が保有する数多くのIT資産を最大限に活用し、「データに基づく意思決定」、「業務プロセスの変革」および「新たな価値創造」を計画的に実現することを通じ、安全性とサービス品質をさらに高め、当協会が地域とともに持続的に成長することを目指します。

基本方針

  • 信頼性・柔軟性の高いシステム基盤を構築します。
  • データの積極活用により、デジタル中心の新しい業務スタイルを確立します。
  • 業務見直しやスマート保安導入など、業務プロセスのデジタル化を進めます。
  • デジタル変革が円滑に実行できる組織文化を形成します。

主な取り組み

 基本方針に沿って、「システム再構築」、「データ活用基盤構築」、「業務プロセスデジタル化」および「人材育成・意識改革」に取り組みます。

1.システム再構築

 現行の各システム(レガシーシステム)を柔軟かつスケーラブルなシステムに再構築し、業務効率を向上させ、今後の環境変化にも迅速に適応します。

(取り組み詳細)

  • システム再構築は、技術的負債を解消し、デジタル変革を実現するための重要な取り組みです。業務影響やコスト面のリスクが大きいため、現状分析、優先順位付け、最新技術活用、段階的移行など、計画的かつ段階的なアプローチにより実施します。
  • 対象となるシステムには、部門共通で利用するシステム(共通システム)と特定の部門が業務で利用するシステム(業務システム)があります。
  • 共通システムは、市場シェアが比較的高い汎用パッケージソフトウェアやSaaSサービスを活用し、業務実施方法の見直しも行いつつ、再開発します。
  • 業務システムは、業務実施方法の見直し・標準化を実施したうえで、要件定義の明確化を徹底し、スクラッチで再開発します。
  • 比較的簡易なシステムの開発では、「ノーコード開発」を活用します。

(システム再構築の利用技術イメージ)

2.データ活用基盤構築

 各システムに蓄積されているデータについて、適切なデータガバナンスの下で、横断的に活用しやすい環境を整備し、データに基づく迅速かつ的確な意思決定を可能にするための基盤を構築します。

(取り組み詳細)

  • 「データ活用基盤」とは、社内のさまざまなデータを一箇所に集めて分析し、経営判断や業務改善に活用するためのシステム基盤です。散在するデータを統合し、リアルタイムでの分析・可視化を可能にすることで、その分析結果に基づいた意思決定が可能となります。将来の拡張性を考え、クラウド基盤上にデータ活用基盤を構築します。
  • 「データガバナンス」とは、組織が保有するデータを戦略的な企業資産として適切に管理・活用するための体制、ルール、プロセスの総称です。データの品質、セキュリティ、プライバシー、利用方法を統制し、組織全体でのデータ活用を効率的かつ安全に推進するための枠組みを規程として制定します。

3.業務プロセスデジタル化

 従来の手作業や非効率な業務実施方法を、デジタル技術を活用した効率的な方法へ見直し、生産性と業務品質の向上を同時に実現します。全体最適の視点で業務プロセスを再設計し、組織全体の競争力強化を図ります。

(取り組み詳細)

①スマート保安システムの導入

 お客さま設備に設置するIoT機器を高度化し、収集した多様なデータをAI技術を活用して分析することで、異常の早期発見、予防保全、最適な作業タイミングの判断を自動化します。
 従来の人による点検作業を補完・高度化し、安全性と効率性を両立した保安体制を確立します。

②業務プロセスの可視化・標準化の推進

 現行の業務実施方法を詳細に分析・図式化して標準化することにより、属人的な作業を排除し、誰もが同じ品質で業務を遂行できる体制を構築します。
 業務実施方法の可視化により改善点を明確にし、継続的な業務改善サイクルを確立します。

③ワークフローの導入・利用拡大によるペーパーレス化の推進

 紙ベースの申請・承認業務をデジタル化し、ワークフロー決裁とすることにより、検索性と保管効率を向上させ、作業時間を短縮します。
 進捗状況の可視化により、業務の透明性を向上し、適切な管理を可能とします。

④モバイル対応環境の整備

 スマートフォンやタブレットの活用を前提としたシステムを構築し、事務所外に出ても事務所内とほぼ同様に業務を遂行できる環境を整備することで、現場作業中の情報入力やデータ承認、緊急時の迅速な対応が可能となり、時間と場所の制約を受けない柔軟な働き方を実現します。
 セキュリティを確保しながら、生産性向上と業務継続性の強化を図ります。

4.人材育成・意識改革

 DXの成功には、IT技術の導入に加え、導入した技術を活用できる人材と組織文化の変革が不可欠です。全従業員のデジタルリテラシー向上を図りながら、従来の組織運営や意思決定の枠組みを見直し、デジタル技術を活用したイノベーションが自然に生まれる組織文化を形成します。

(取り組み詳細)

①包括的デジタルスキル研修プログラムの構築

 職位や担当業務に応じた段階的な学習カリキュラムを設計し、基礎的なデジタルリテラシーから高度な技術スキルまでを体系的に学習できる仕組みを整備します。新規入会者向けの基礎研修、中堅従業員向けの実践研修、管理者向けのDX戦略研修など、階層別に最適化された研修プログラムを作成します。
 集合研修とeラーニングを組み合わせ、継続的な学習環境を構築し、実業務での活用を通じスキルを定着します。

②内部育成と外部採用の戦略的推進

 従業員の中からDX推進リーダーを選定し、専門的な研修や外部機関での学習機会を提供して内部人材を育成します。
 高度な技術スキルや変革経験を持つ外部人材を戦略的に採用し(出向・派遣受入を含む)、内部人材と外部人材が連携したDX推進チームを組成することで、全社的な変革をけん引する体制を構築します。

③組織文化の変革推進

 経営トップが明確なDXビジョンを示し、組織全体に変革の必要性と方向性を発信します。現場による改善や試験的な取り組みを積極的に評価・支援するなど、現場の創意工夫の取り組みを推奨します。
 成功事例の共有と表彰により、変革への取り組みを可視化し、組織全体のモチベーションを向上させます。

DX指標

DXの達成度を測る指標として以下の3項目を設定しました。

  • システム再構築完了率
  • クラウド移行率
  • データ活用件数

組織体制

2024年7月に「DX推進本部」を発足し、協会全体の調整・推進体制を強化

スケジュール